定年退職後の所得税 確定申告どうする?

ニューヨーク、セント・ジョン・ザ・ディヴァイン大聖堂、2017年撮影

どーも!タツマルです🐲

今回は定年退職後の所得税 確定申告についてです。

会社員の場合、所得税や住民税は会社が給与天引きして納付してくれますし、年末調整で年税額の確定までしてもらえます。

ところが退職したら、当然ながら会社は何もやってくれません。全て自分でやらなければいけなくなります。

会社がやってくれないからといって、税金への対応をおろそかにしていると、損をする可能性が高いです。

ついては今回、定年退職した後、税金をどうするか?具体的には、所得税の確定申告をどうするか?について、私の実例を踏まえ、ご紹介します。

目次

退職年に確定申告しないと大損する?!

確定申告するだけで56万円の還付!

定年退職の場合、退職日は60歳到達月の末日、または年度末(3月末)が多いと思います。

もしも12月末退職であれば、その年の給与賞与にかかる所得税は会社が年末調整してくれますが、1~11月に退職する場合は年末調整してもらえません。

この場合は確定申告がマスト!だと思います。なぜなら確定申告することで、所得税が還付される可能性が高いからです。

私のケースでは、確定申告するだけでなんと!56万円もの所得税が還付されるんです!

これってすごくないですか?56万円ですよ!

詳しい計算は以下の通りです。

2024年7月末 定年退職

(所得)

  • 給与所得 718万円(1~7月分 給与収入923万円-給与所得控除195万円-所得金額調整控除10万円)
  • 雑所得 43万円(8~11月分 企業年金収入103万円-公的年金等控除60万円)

合計所得 761万円(給与所得+雑所得)

(所得控除)

  1. 人的控除 86万円(基礎控除48万円+配偶者控除38万円)
  2. 社会保険料控除 150.3万円(a+b+c)
    a.給与天引き分 121万円
    b.健保任継保険料 22.5万円(4.5万円×5ヵ月(8~12月))
    c.妻の国民年金保険料 6.8万円(1.7万円×4ヵ月(8~11月))
  3. 生命保険料控除 8万円
  4. 小規模企業共済等掛金控除 9.5万円
    (DCマッチング拠出1.35万円×7ヵ月(1~7月))

所得控除計 254万円(1~4計)

(年税額及び還付額)

課税対象額 507万円(合計所得761万円-所得控除計254万円)

年税額 60万円((507万円×20%-42.75万円)×復興税1.021)

源泉徴収額 116万円(給与108万円+企業年金8万円)

還付額 56万円(源泉徴収額116万円-年税額60万円)

このように、普通に確定申告するだけで、56万円もの所得税還付を受けられるんです。なんと源泉徴収額116万円のほぼ半分が戻ってくるわけです。

でも確定申告しなければ1円も還付されません。

つまり「確定申告しなければ大損する!」ってことなんです。

なんでこんなに還付されるのか?

それにしても、ただ確定申告するだけで56万円もの所得税が戻ってくるなんて、不思議だと思いませんか。なんでこんなことになるのでしょうか?

その理由は、給与からの源泉徴収額は、その給与収入が1年間続く前提で計算されますが、年の途中で退職する場合その前提よりも年税額が低くなるため、結果として源泉徴収額が年税額よりも多くなるから、なんです。

といっても「なんのこっちゃ?🙄」という感じでわかりづらいので、次の具体例をご覧ください。

(具体例)
例月給与85万円・賞与なし
年収1020万円(85万円×12ヵ月)
扶養する配偶者あり

この人の場合、例月給与85万円からの源泉徴収額は66,380円になります。ですので年間の源泉徴収額は796,560円(66,380円×12ヵ月分)です。

そして年収1020万円(例月給与85万円×12ヵ月)にかかる年税額は796,482円です。

この年税額は、上記の年間の源泉徴収額796,560円とほぼ一致します。その差額はわずか78円で、これが還付額となります。

一方、この人が3月末で退職し、その後収入がない場合はどうなるでしょうか?

この場合、1~3月の源泉徴収額は199,140円(66,380円×3ヵ月)です。そして年収255万円(85万円×3ヵ月)にかかる年税額はなんと!わずか25,882円です。

よって確定申告することで、年税額を超える173,258円(源泉徴収額199,140円-年税額25,882円)がドカン!と還付されるわけです。

この例で具体的なイメージがお分かりいただけたでしょうか?

なお、税額計算の詳細は下表をご参照ください。

【本具体例の税額計算表】

項目例月
給与
年収
(12ヵ月)
年収
(3ヵ月)
給与85万円1020万円255万円
給与所得控除後の金額825万円170.5万円
健保・介護48,057576,684144,171
厚生年金59,475713,700178,425
雇用保険5,10061,20015,300
給与所得
控除額
162,500
基礎控除40,000480,000480,000
配偶者控除31,667380,000380,000
所得控除額
合計
346,7992,211,5841,197,896
課税対象額503,2016,038,000507,000
年税額796,48225,882
源泉徴収額66,380796,560199,140
還付額78173,258
  • 健保・介護は協会けんぽ 令和6年度 東京都の保険料(標準報酬月額83万円×11.58%÷2)
  • 例月給与の源泉徴収額は電子計算機の特例により算出

定年退職年の確定申告で税金を貪欲に取り戻す

さて、私の場合も上記の具体例と同様、多額の所得税を源泉徴収されていましたので、普通に確定申告するだけで56万円もの還付を受けられます。

でも、これだけじゃ面白くありません。

定年退職の年は、年の途中までとはいえ現役時代の高額な給与を受け取れる最後の年です。

私自身の年収は、1~7月の給与収入が923万円、そして8月以降の企業年金(DB)収入が103万円で、合計1026万円になります。

これにかかる所得税は60万円、住民税はざっくり52万円です。合計112万円ですのでまだまだ高いですよね、税金・・。

なのでここから、取り戻せるだけ貪欲に取り戻したいと思います。さてどうするか?

その作戦は次の4つです。

  1. 任意継続の健康保険料を年内に可能な限り前納する
  2. 任意加入した国民年金の保険料を年内に可能な限り前納する
  3. iDeCoに加入して掛金を年内に最大限拠出する
  4. 必要な医療(歯科、膝の再生医療等)を年内に受診する

この4つはいずれも「所得控除」、つまり課税対象額から差し引かれる金額を増やすことが目的です。所得控除が増えるほど課税対象額が減るので、税金が安くなる、というわけです。

では、ひとつずつ見ていきましょう。

任意継続の健康保険料を年内に可能な限り前納する

過去記事「定年退職後の健康保険どうする?③(任意継続・国民健康保険ガチンコ比較)」で述べた通り、私は2026年3月までの20ヵ月間、健康保険を任意継続(任継)する予定です。

この任意継続の保険料を、可能な限り最大限、前納することにしました。「前納」とは、将来の保険料を前払いすることです。

できれば任継予定期間の20ヵ月分の保険料を全て納付したかったのですが、前納可能な期間は年度末までです。私の場合、前納できるのは任継に加入した8月から翌3月までの8ヵ月分のみでした。

その保険料は、月額45,346円(健康保険料37,720円+介護保険料7,626円)×8ヵ月分=362,768円となるはずですが、前納により保険料が若干割引され、358,651円でした。(4,117円安くなりました😅)

ともあれ前納の目的は、保険料の割引よりも、所得控除(社会保険料控除)額を増やして節税することです。

任意継続保険料を通常の毎月納付とした場合、社会保険料控除の対象となるのは8~12月分(5ヵ月分)の226,730円(任継保険料45,346円×5ヵ月)です。したがって保険料を前納することにより131,921円(358,651-226,730)所得控除額を増やすことができます。

この前納による節税効果は、所得税20.42%+住民税10%とした場合、4万円ほどが見込めます。前納による保険料の割引と合わせると4.4万円ほどの負担減です。

コイツはなかなかのインパクトですよね~🤔

任意加入した国民年金の保険料を年内に可能な限り前納する

続いて、国民年金保険料の前納です。

過去記事「公的年金をどうするか?②(国民年金へ任意加入するべきか?)」に記載の通り、私は60歳で退職後、国民年金に任意加入しました。

そして、私と妻の2名分の国民年金保険料と付加保険料について、前納可能な最大期間20ヵ月分(2024年8月~2026年3月)の686,240円を、一括で納付したわけです。

こちらも任意継続の健康保険料と同様、前納による保険料の割引が適用され8,960円安くなりました。

本来ならば私自身は、国民年金に任意加入する必要はなく、妻の国民年金保険料さえ払っておけば良かったんです。その場合、16,980円×4ヵ月(8~11月)の67,920円を納付し、それが社会保険料控除となります。

ですが私が実際に納付したのは、上記の通り686,240円ですので、本来の金額よりも618,320円も社会保険料控除額を増やすことになりました。

これによる節税効果は、所得税20.42%+住民税10%とすると、なんと!18.8万円も見込むことができます。さらには前納の割引分8,960円も合わせると19.7万円もの負担減です😮

このように、国民年金へ任意加入し、可能な限り保険料を前納することにより、大きく節税することが可能です。おまけに老齢基礎年金額を増額できますし、次の通りiDeCoの掛金を拠出することもできるわけです。

iDeCoに加入して掛金を年内に最大限拠出する

続いてiDeCoです。

私は国民年金に任意加入することで、iDeCoにも掛金を拠出できるようになりました。

どういうわけかiDeCoは、公的年金の加入者でなければ掛金を拠出できないんです。こんな意味不明な制限、さっさと取っ払ってくれれば良いのですが、今のルールではそうなっているのでやむをえません。

いずれにせよ私自身は、国民年金の未納期間がありましたので、ラッキーにも国民年金に任意加入できました。その結果、めでたくiDeCoにも掛金を拠出することができたわけです。

本年分の拠出額は26.8万円(6.7万円×4ヵ月(8~11月))となり、その全額を確定申告で所得控除できます(小規模企業共済等掛金控除)。

これによる節税効果は所得税と住民税の合計30.42%で8万円ほど見込めます。

おまけにiDeCo残高を増やせますし、その残高を一時金で受給する際の退職所得控除額も増額できて節税にもなるんです。

いやーそれにしても、良いことずくめですね😉

iDeCo拠出期間は勤続年数と同等の扱いになるため、退職所得控除額の算定対象期間となります。詳細は「退職金どう受け取る?③(DCをiDeCoに移して一時金受給する理由)」をご一読ください。

必要な医療(歯科、膝の再生医療等)を年内に受診する

最後に医療費控除についてです。

ご承知の通り、その年にかかった医療費の10万円を超える金額は、確定申告で全額(ただし上限200万円)を所得控除できます。

普通の保険診療のみならば、よほど大病しない限り、夫婦2人の医療費が年間10万円を超えることはあまりないと思います。

しかしながら、保険の効かない自由診療、たとえば歯科(インプラント治療等)や眼科(レーシック等)、関節の再生医療等の場合は、医療費が一気に跳ね上がります。

これらはたいてい医療費控除の対象になるので、遅かれ早かれ治療を要するのであれば、年収が高い現役時代にやっておくべきでしょう。

私も妻も、ここ数年はほぼ毎年これらの高額医療を受診し、確定申告で医療費控除による還付を受けています。

今回の確定申告は、医療費控除を大きく取れる最後のチャンスですので、歯科等の自由診療を年内に受けました。

結果として、年間の医療費は保険診療分も合わせて102万円となりましたので、10万円を超える金額92万円が所得控除できます。

これによる節税効果は92万円のうち、75万円が税率30.42%、17万円が20.21%として26万円!にものぼります。

4つの作戦による節税効果

以上4つの作戦を展開した結果、私の年税額は以下の通り、大幅にダウンしました。

  • 所得税:598,408円→219,208円(379,200円ダウン!)
  • 住民税:520,200円→325,600円(194,600円ダウン!)

なんと!所得税・住民税合わせて57万円も減らしたんです。

その結果、確定申告での所得税還付額は、94万円!(源泉徴収額116万円-年税額22万円)です。

そして今年の5月から納付する住民税も52万円だったところを33万円まで減らしました。この金額なら所得税の還付金で十分カバーできるどころか、一括納付しても61万円おつりがもらえるほどです。

所得控除を増やすことによる爆発的な節税効果をお分かりいただけたかと思います。

社会保険料や医療費など遅かれ早かれ払うものであれば、退職直後の年収が高い年のうちに可能な限り払ってしまうのが良いと思います!

なお、所得税・住民税の計算の詳細は下表のとおりですので、ご参照ください。

項目a.普通に確定申告b.4つの作戦を展開して確定申告節税効果
(a – b)×30.42%
給与収入
(1~8月)
9,227,600同左
給与所得控除後の金額7,177,600同左
企業年金
(8~11月)
1,034,868同左
公的年金控除後の金額434,868同左
給与所得+年金所得7,612,468同左
基礎控除480,000同左
配偶者控除380,000同左
給与分社会保険料1,214,717同左
任意継続
保険料
226,730358,65140,130
国民年金
保険料
67,920686,240188,093
社会保険料控除計1,509,3672,259,608
DCマッチング拠出94,500同左
iDeCo掛金0268,00081,526
小規模企業共済控除計94,500362,500
生命保険料控除80,000同左
医療費控除0924,564264,043
所得控除額合計2,543,8674,486,672
課税所得金額5,068,0003,125,000
所得税
年税額
598,408219,515
源泉徴収額1,156,400同左
還付額557,992936,885
住民税520,200325,600
所得税
+住民税
(a)
1,118,608
(b)
545,115
(a-b)
573,493

まとめ

  • 年の途中で定年退職する人は、所得税の確定申告がマスト。確定申告するだけで多めに源泉徴収されていた所得税を取り戻すことができる。私の場合、確定申告するだけで56万円もの還付金をゲット!
  • 定年退職した年は、現役時代の高額な給与を受け取れる最後の年。よって、極限まで所得控除を積み上げて、貪欲に節税できる最後のチャンス。そのために私が実行したのは次の4つの作戦
  1. 任意継続の健康保険料を年内に可能な限り前納(4万円節税!)
  2. 任意加入した国民年金の保険料を年内に可能な限り前納(19万円節税!)
  3. iDeCoに加入して掛金を年内に最大限拠出する(8万円節税!)
  4. 必要な医療(歯科、膝の再生医療等)を年内に受診する(26万円節税!)

所得税と住民税を合わせて57万円もの税額を取り戻す!

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